それは2回戦の舞台でのことです。私は一生懸命、マイクの前で自分のネタを演じます。しかし私の目の前に座っていた若い一人の女の子が、おもむろに携帯電話を取り出し、メールを始めたのです。ショックでした。

そして結果は2回戦敗退。私は自分が自己流で、しかも身内ウケで笑ってもらっていただけの井の中の蛙だったことを思い知りました。

 

私は、本格的に笑いを勉強しようと決意しました。ある日ネットで様々な笑いに関する情報を調べていると、あの吉本興業のお笑いの養成所である「吉本総合芸能学院(吉本興業の養成所(NSC))」の募集要項を見つけたのです。直感的に私は「これだ!」と思いました。

しかし吉本興業といえば、お笑い界の東大のような存在です。この年齢で、到底私が入れるとは思えませんでした。なぜなら芸能界で「事務所」に入ることの難しさを、私は身に染みて知っていたからです。

そして、もしもこの養成所に入れたとしても、周りの年齢はきっと自分の半分ほどの若者たちでしょう。色々大変な思いをすることは目に見えています。

私はすぐに「無い無い!」と、その受験する気持ちをかき消しました。

でもあの吉本で、本当の笑いを勉強できるなら……。そんな期待と不安が入り混じる葛藤の中、募集締め切りまでの時間はどんどん過ぎていきました。