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背中を押してくれた一言

吉本興業の養成所募集の締め切りが数日後に迫りながらも、私はその決断が出来ずにいました。怖かったのです。

応募条件は「18歳以上」とだけ。当然応募者はみんな20代前後の若者たちでしょう。そこへ彼らのお母さんほどの年齢の私が行って、嫌な思いをするのは目に見えていました。しかし一方で、その未知の世界に惹かれている自分もいたのです。

私は、ある1人の友人にだけ相談をしました。するとその友人は「ここで行かなかったら、去年と同じ1年だよ」と言ったのです。その言葉を聞いて私はハッとしました。

〈去年と同じ1年〉――。

それは、芝居を打つ公演費を捻出するために、朝から晩までアルバイトする日々。そしてその公演を観に来てくれた誰かが、「この娘は……!」と私を見出してくれ、女優としての道が拓ける……。そんな夢物語のような奇跡だけを信じて一人芝居を打ち続けて来たこれまでの20年は、そんな1年の積み重ねでした。

しかしそのやり方で、今日まで結果が出ていないという現実……。

私は「もうこれ以上同じ1年を過ごしてはいけない」――。

そう初めて強く思いました。