心のこもった丁寧で贅沢な朝食
一度、便利なものがあることがダメなんだと思い込み、家にある便利なものをどんどん処分したことがあった。
顆粒だし、サランラップ、ジップロックから始まり、炊飯器、電子レンジまで。(炊飯器とレンジはさすがに捨てられず、土間にしまった)
土鍋でご飯を炊き、煮干しと鰹節から出汁をとる生活をしてみた。
手間だけど、土鍋からお米のいい香りが部屋中に充満してうっとりした。心を込めて、時間をかけてようやくできたお味噌汁の味は、とても上品で、体に染みた。
ラップも炊飯器もレンジもないから、余ったご飯はお櫃に入れて冷蔵庫で保存し、翌朝はせいろで蒸して再加熱した。
なんと! 土鍋で炊いたご飯をせいろで蒸し直すなんて、私、いま、めちゃくちゃ丁寧に暮らしてる……!
温め直したご飯と出汁からとったお味噌汁の、心のこもった丁寧で贅沢な朝食をテーブルに並べた。子どもたち、さあ召し上がれ!
「ママー。僕、グラノーラ!」「俺、食パンがいい」
おい。お味噌汁、何時から作ってると思ってんだ……。
がっかりしながら、電子レンジと炊飯器をキッチンへ戻した。
子どもたちに見事に振られ、文明の利器が早々に土間から出戻ってきたキッチンを眺めながら、私は猛烈な虚無感に襲われていた。あんなに時間と手間をかけたのに、誰からも褒められなかったのだ。
あーあ、せめてSNSで、自慢しよ……。
私は何のためにやってんだ? これ。
