仕事や育児が落ち着いたら…
でも、あの土を触っている時間だけは、誰にも見せなくても嫌いじゃなかったな、と思い出す。
それに、こだわりの調味料や、作家ものの美しいうつわへの憧れも、すべてが見栄やフェイクだったわけではない。
素敵なうつわを手にすると、ただ嬉しい。「こんな料理が似合いそう」「あんな食器と合わせよう」と、素敵な食卓がパァーっと頭に描かれて、確かに私はうっとりするのだ。
それらの出番のないうつわたちは「本当は他者の目など気にせず、こういう世界だけで自己完結して生きたい」という、捨てきれない純粋な美意識への執着の象徴として、今も戸棚の奥の方で出番を待ち侘びている。
いつか必ず使う。いや、週末には使おう……!
今使ってるニトリのお皿たちが割れたら、その時こそ必ずスタメンに……!
美しいライフスタイルの本を開くたび、私はそこに、強烈な憧れと、それができない自分への絶望を同時に突きつけられている。
「もう少し仕事や育児が落ち着いたら、本当に私は、手作りジャムを作って、土鍋でご飯を炊いて、鰹節を削ってお味噌汁を作って、季節ごとにテーブルを完璧にセッティングして、丁寧な暮らしをするんだ」と、懲りずに自分に言い聞かせている。
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