大ピンチずかん3』(鈴木のりたけ:著/小学館)

 

大企業では規模の大きな仕事ができますが、僕は自分の手触りが感じられる仕事がしたいと思ったんです。会社の寮を出た後、小さなアパートで自分自身を振り返って気づいたのが、大学の時から雑誌を読むのが好きだったということ。

アルバイト先がカメラ店だったから、写真を撮ることはできるし、人と話すのは得意なので、会いたい人に会って話を聞いたら面白いかもしれないと思って。

ちょうどパソコンで簡単にデザインができるソフトが出てきた時期だったので、「これさえあれば一人で雑誌が作れる」と、ワクワクしながら取り組みました。25歳の時に初めて真剣に「自分の本当にやりたいこと」と向き合ったのです。

とはいえ好きなことだけをしていては食べていけないので、自作の雑誌を持って就職活動をしていると、運よく広告デザイン会社にグラフィックデザイナーとして入社できました。

美術もデザインも専門に学んだことのない人間をよく雇ってくれたと思いますし、実際に仕事をこなすのはかなり大変でしたね。当時は毎日終電で、週に1日は泊まりが当たり前。でもデザインのセンス、多くの人に伝わる表現といった大切なことを学べたのはよかったと思います。

多くの刺激をもらえる日々でしたが、仕事自体はデザイナーやディレクターなど大人数で作り上げていくもので、完成した作品に自分の名前が残ることはありません。

数年が経った頃、やはり自分の手触りを感じるような仕事がしたいと初心に返って思い立ち、イラストを描いてコンテストに応募したり、自分の描いた作品を広告業界の人に見せたりと、創作活動を始めるようになりました。

後編につづく

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