2025年から現在のアトリエに。主な画材はアクリル絵の具、ドローイングペンとコピック(マーカー)。細かく描き込む作品も多くあるため、細い筆が大量にストックされている(撮影:須合知也)
子どもが日常で直面するさまざまなピンチをユーモアたっぷりに描いた絵本『大ピンチずかん』は、現在3巻で300万部をこえる大ヒットシリーズだ。作者の鈴木のりたけさんは、二男一女の父親として、子どもたちの成長を見守ってきたという。(構成:山田真理 撮影:須合知也、本社・武田裕介)
80歳過ぎの読者からの手紙に感激
絵本というと、子どものためのものと思う人も多いかもしれません。たしかに僕の絵本の読者層は、幼児や小学生です。ただ自分としては、子どもだけに向けて絵本を作ってきたつもりはまったくなくて。
実際、「鈴木のりたけ」という名前でネットを検索したり、書店に問い合わせてくれたりするのはシニアの方がとても多いんです。さまざまな職業の方が働く現場を描いた『しごとば』という絵本を出した時、80歳過ぎの男性から「物を知る楽しみを教わった、素晴らしい本でありました」と達筆なお手紙をいただいて、感激したことも。
絵本は、まだ言葉がつたない子どもでも楽しめる「ビジュアルコミュニケーション」です。だから大人だって楽しめるし、言語をはじめ、いろいろな壁を乗りこえる力を持つ、すごく面白いメディアだと思っています。
じつは、「大ピンチずかん」シリーズを思いついたのは、わが家の3人の子どもたちのおかげ。アイデアは、子どもがちょっと慌ててしまうような瞬間や、面白い言い間違いを記録していたスマホのメモから生まれました。
『大ピンチずかん』の1作目の表紙でもあるコップから牛乳をこぼす絵は、次男がモデルになっています。牛乳がコップからあふれるという予期せぬ出来事に思わず固まっている様子があまりに可愛くて。
そうした子どもたちが直面するピンチをスケッチして並べていたら、「これは図鑑になる」と思ったのが始まりです。図鑑の編集経験がある担当者にアドバイスをもらいながら、欄外のミニ情報や、ピンチのレベルを指数で入れるといった見せ方の工夫をしていきました。