一世を風靡した衣装の誕生秘話

「魅せられて」がヒットした後は、浮世離れした女神のようなイメージが求められました。酒井さんから「大口を開けて笑わないこと。霞を食べて生きているような、おしとやかなイメージで」と言われていました。でも本来の私は活動的なので、もっと演出が必要だと考えた末にたどり着いたのが、あの羽を広げたような衣装だったのです。

ジュディ・オングさん
30代の多忙を極めている頃(提供:所属事務所)

中国では孔雀が神聖な鳥であるとされています。中でも私は白い孔雀が羽を広げた様子の神々しさに感動を覚えていたので、そこから発想を得て自分で考案しました。最初は大きな袖を前で合わせてスクリーンに見立て、エーゲ海の映像を映そうと考えていたのです。ところが初お披露目をする歌番組の出演に間に合わず…。神奈川県の油壷の映像ならあると言われ、それではイメージが違う(笑)、美しいエメラルドグリーンの海でなければ、と断念しました。

苦肉の策で、背後から照明を当てることに。するとオーガンジーの白い羽が神秘的な雰囲気を醸し出すと放送後に大好評で、このスタイルでいこうと定着しました。衣装にはさまざまなバージョンがありますけれど、必ず白。マニキュアもパールホワイト、イヤリングも指輪もパールかダイヤモンドと決めていました。

実は「魅せられて』は大ヒットしていた映画『エ―ゲ海に捧ぐ』を日本でPRするためのイメージソングでした。当初、制作関係者は色のついていない無名の歌手がいいだろうと考えていたのだとか。でもジュディの暖色の声がぴったりだという酒井さんの一声で私が歌うことに。ただしレコード会社の戦略で、ワコールのCMソングとして流れた時には私の名前は伏せられていました。CMを観た方々に「誰が歌っているの?」と関心を寄せていただくことが狙いだったようです。その思惑通り、有線やラジオのリクエストが殺到して火がついたと聞いています。

でも私自身は、レコードが1日に10万枚も売れている、オリコンチャートで1位に輝いたと聞いてもピンときませんでした。テレビの歌番組ではお客様のいないスタジオで歌うので、生の反応に触れることができず、実感が湧かなかったのです。そんなある日、東京音楽祭に出演して、司会の方に紹介されて舞台に出ていくと、客席からゴーっと地響きがするような歓声と拍手が沸き起こって。その時に初めて「あ、この曲、売れているんだ!」と実感しました。