寝たらそのまま
最後の小説集をうたった『掌より愛をこめて 阿刀田高さいごの小説集』を今年5月に出版。今も、自宅で単身生活を営む。これからは阪神タイガースを応援したり、テレビを見たりしながらゆっくりと過ごすつもりだ。
「1日1日をそれなりに、あまりみっともなくならないように生きて行こうと思っているんです。この先は健康に長生きして、寝たらそのまま亡くなってしまうのが理想です」
子どもたちには希望も伝えてある。「私は無宗教ですが、無宗教だとかえって葬儀が大変らしくて。家内がキリスト教でしたから、私もキリスト教式で構わないと伝えてあります」
若い頃から「死は無」だという考えで生きてきた。だから終活は意識したことがない。
「神話や死後の世界を頼りに生きている人もいるから、あまり大きな声では言いたくないけれど、死は無だと思っているので、墓についてのこだわりもないんです」と明かす。
子どもたちにユニークな提案をしたことがあった。
「私の骨を粘土に塗りこんで、壁に塗ってもらったら、子どもたちみんなが話しているところにいられる。でも、それを言ったら子どもたちから『気持ち悪い』『引っ越したらどうするんだ』と却下されました。樹木葬もいいなと思ったけれど、あまり家内が乗り気じゃなかったから。最近は、都心でも共同墓地で納骨できるところもある。そこにお母さんと一緒に入れてくれたらいいからと言ってあります」
91年の人生を振り返り、「この世界の出来事は全部放物線だと思っています。極端な人生もあればそうでない人もいる。できるだけ物事のよい面をみるようにしています。この人はいい人だと思うと、私に対してはいい人になるんですよ。人生で悪い人に会ったことがないんです」と笑う。
「人生こんなもんだ」と思いながら、これからも日々を機嫌よく過ごしていくつもりだ。





