阿刀田高さん
阿刀田高さん
短編小説の名手として知られる作家、阿刀田高さん(91)が5月、最後の小説集『掌より愛をこめて 阿刀田高さいごの小説集』(新潮社)を出版した。デビュー以来執筆した短編は900編以上。ミステリー、ブラックユーモア、言葉遊び…。半世紀にわたる創作活動の最後となる短編集は、阿刀田さんらしさが詰まった1冊となった。阿刀田さんに作品集や執筆への思いを聞いた。(取材・文:婦人公論.jp編集部・油原聡子 撮影:本社・武田裕介)

「これが最後だとわかる」

いつもと違う電車に乗って思い出したことは…「下り電車で」。近所にできたコーヒー店には変わったマスターがいて…「左門ナイト」。

400字詰め原稿用紙10枚に満たないショートショート36編が収録されている。

「アイデアを基本として小説を作ってきました。ショートショートだと1冊の本を作るまでにはたくさん書かないとダメ。どれくらい労力を使うかわかっているから、もうこの年齢になるとこれが最後だろうなっていうのはわかるんですよ」と率直な思いを明かす。

巻頭の『黒いシアター』は、新潮社のPR誌『波』に2023年から2025年にかけて連載されたもの。執筆当時は90歳近くだったというから驚きだ。そのほか、新聞や雑誌に掲載された過去のショートショートを収録。予想を裏切る結末、仄暗さを感じる独特の世界観…。切れ味鋭い作風は健在だ。