そして僕の作品を面白いと思ってくださった別の出版社から声がかかり、描きおろしの絵本を出すことになりました。その時に編集者から、「既成概念にとらわれず、鈴木さんの表現したいものを」と言ってもらえたのは本当に幸運だったと思います。

僕のことだから、「子どものためになるよい本を」なんて言われたら、堅苦しさを感じて描くのをやめてしまったかもしれませんから(笑)。その頃はまだデザイン会社に勤めていたので、描くのは仕事帰りの深夜や土日。あの頃が人生でいちばん働いていた気がします。

その時の作品がヒットしたことをきっかけに、8年勤めた会社を退職。当時共働きだった妻は「あなたのやりたいことをやれば」と応援してくれました。彼女とは、大学の卒業旅行で知り合ってからの仲で、前職を辞めた経緯も知っている。きっと僕の性格をよく理解してくれていたのでしょう。

でもその時には長女が生まれていたので、編集の方からは、「まだ辞めないほうがいいんじゃないですか」と心配されたものでした(笑)。

もちろん不安がなかったわけではないけれど、万一無職になったら、アルバイトでも何でもして生活を支えていく覚悟は持っていた。そもそも、偏差値や大企業といった世間の価値観とは外れて、自分の興味があることで生きていく道を選んだわけですから。