理不尽な現実
心で拍手をしつつ、ぼくは身体を洗って、タオルで身体の水気をきれいに拭き取ってから、ロッカールームへと出ていきました。そして、自分のロッカーの鍵を開けようとしたとき、ふと周辺の床が水でびしょ濡れになっていることに気づきました。となりを見たら、濡れた身体を拭いている行水ジジイの姿がありました。なるほどね……。つまり、叱られた行水ジジイが、身体を拭かぬまま慌てて風呂から飛び出して、ロッカールームの床をしずくで濡らしてしまったのです。
まったく迷惑なジジイだなぁ、と思ったら――、
「あんた、床を濡らしたなら、ちゃんと拭きなさいよ」
ぼくの背中に、しゃがれた声が刺さりました。びっくりして振り返ると、ナント、天国ジジイに睨まれているではありませんか。
「え? こ、これは、違……」
「あそこにモップがあるから、さっさと拭けっ!」
怒鳴られた勢いで、思わず床を拭きはじめてしまったぼくのすぐ後ろを、張本人の行水ジジイが引きつった顔で、あたふた逃げていくという理不尽な現実が――。
コノウラミ、ハラサデオクベキカ……。
