ジムのフリーウェイトゾーンにて

地下鉄や夜の電車に乗っているときは、外が暗いせいで窓ガラスが鏡になり、車内の乗客たちをくっきりと映し出します。そういうときは、いわゆる鏡越しに目が合ったりしますよね? そして、それとまったく同じ状況が、ジムのフリーウェイトゾーンでも起こっちゃうんです。なぜなら周囲が鏡張りだから。目が合う相手が美女ならいいんですけど、マッチョなオッサンだったりすると、意味もなく損をした気分になってしまうわけです。自分も40代のオッサンなのにね。

いちばん嫌なパターンは、重いウェイトを挙げた直後に目が合っちゃうケース。

俺、いま、この重さを挙げたけど、見てた?

みたいな感じの、自己顕示欲とナルシシズム丸出しの目線だったりすると、もうドン引き。相手にその気がなくとも、こっちまで気恥ずかしくなってきます。

でも、いったんそういう感じで目が合ってしまうと、次にぼくがダンベルを挙げ終えた後に、うっかり気になって鏡越しにチラリと視線を送ってしまったりして、そこでふたたび目が合ってしまうわけです。こっちとしては、「見てたら嫌だな」と思って見たのに、相手はなんとなく「挙がったね。ちゃんと見てたよ」的な視線だったりして……。もう、その瞬間から、穴があったら入りたいトレーニング時間がはじまるワケです、はい。

※本稿は、『となりの筋トレ 小説家は見た!ジムの愉快な日々』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

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となりの筋トレ 小説家は見た!ジムの愉快な日々』(著:森沢明夫/飛鳥新社)

数々の心温まる名作を送り続けた小説家・森沢明夫の前代未聞の人間観察エッセイ。

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