高校を卒業する父との約束
―― 湖月さんは昨年『平家物語-胡蝶の被斬-』で平重盛を演じた時も、専門的な文献を繙いたり、重盛の墓と伝えられている茨城県のお寺を訪ねたりと、探究心を発揮していました。宝塚歌劇団を退団後、放送大学に入学して、教育と心理を学んだことからも、探究への意欲がうかがえます。
放送大学の入学は、ちょっと長い話がありまして(笑)。私は小学校5年で宝塚にハマった時から、音楽学校受験にまっしぐら。幸いなことに、中学3年、15歳の時に、最初の受験で合格をいただきました。
両親も私を応援してくれていましたが、父には「それでも高校は卒業しておいてほしい」という願いがあり、音楽学校で学ぶ間に、通信制のNHK学園高等学校にも通うことを約束したのです。予科生の時はとても時間が取れませんでしたが、本科生の時にNHK学園に1年だけ通い、歌劇団に入団してからは忙しくてそのままに…。でも、自分としてはそれで父との約束を果たした気分でいたんですね。
その後、宝塚歌劇団に入団して、学年が上がって専科に配属されていた時期に、NHK学園の同級生の方たちから手紙をもらいました。そこには、高卒資格を取り、時間はかかったけれど大学に入学して、無事に卒業したことが書かれていました。その手紙を読んだ時、私は足元のマンホールのフタが、パカーッと開いて、その穴に自分が落ちていくような感覚に陥りました。
こうやって皆さんがコツコツと勉強を続けていた時間に、いったい自分は何をやっていたんだろう。下級生の時に、勉強を続ける時間はあったはずなのに……と、自分に腹が立って。ただ、その後星組トップスターに就任させていただいたので、その思いはいったん封印し、舞台に集中することにしたのです。その封印が、退団を決めた時にまたパッと解かれまして。