宝塚に入るまでは、ずっとダンスが好きだった

―― 学びの楽しさは、舞台人としてのセカンドキャリアにもつながりましたか。

教育と心理を学んだことは、舞台で作品を演じる上で大きなプラスになりました。もともと人間の感情の奥深さに、とても興味を持っていたからこそ、益井さんのメソッドにある感情表現にも、ぐっと惹かれるのだと思います。

宝塚在団中も退団後もミュージカルやコンサート、ダンス公演、朗読劇など、さまざまな舞台に立たせていただいていることは、本当にありがたいことだと思っています。たとえば『DANCE LEGEND』シリーズでは、ヒップホップ、アルゼンチンタンゴ、フラメンコと、それぞれのプロフェッショナルと一緒に作品を作らせていただきました。そのような挑戦が毎回、大きな学びになっています。

―― 湖月さんはダンス、歌、芝居のどれが一番お好きでしょうか?

その質問をよく聞かれるのですが、答えるのが難しい! 宝塚に入るまでは、ずっとダンスが好きだったんです。でも、入団後に「演じること」を学んでから、ダンスも歌もすべて芝居に通じていることがわかって、どのシーンでも「ドラマを伝える」ことが大事と思うようになりました。

ブロードウェイミュージカル『シカゴ』の来日公演(2015年)で、ヴェルマ・ケリー役を演じた時、振付家のゲイリー・クリストさんから、大きな意識転換が起こる指導をいただきました。通常、舞台では目の前の扉を全開にする気持ちで、お客さまに自分をアピールしようとしますよね。でも、そうじゃなくて、「小さな穴があって、その先に何があるか。それを観客が前のめりで覗き込みたくなるような表現をしなさい」と、いわれたのです。大げさな動作ではなく、たとえば目線を動かすだけでお客さまを惹きつける。その繊細でミニマムなスタイルこそが、ボブ・フォッシー流なのだ、と。

とても面白い表現ですよね。これぞニューヨークというスタイリッシュさですし、同時に、いらないものを削ぎ落して神髄に近づいていくという意識は、日本舞踊や能にも通じる。汲めども尽きない探究心がどんどん湧きあがってきます。

湖月わたる
ブロードウェイミュージカル『シカゴ』の来日公演(2015年)では振付家のゲイリー・クリストさんから、大きな意識転換が起こる指導をいただきました。