「学歴にこだわるなんてつまらない」と思えたら
それにしても、子供が「おやじは一体どこの大学を出たんだい」とは、生意気です。親のお金でぬくぬくと学校へ通っているくせに。ご主人の学歴より子供の教育の方が目下の大問題です。こっぴどくおしりをたたいてしつけなおしをなさった方がいいと思います。
妻が夫を侮蔑している家庭には、どうもそんな精神的栄養不良のかわいそうな未熟児が出来てしまうようです。あなたの貸金やご主人の女の問題も、根はやっぱり陰うつな家庭にあるのではないでしょうか。
あなたが「学歴にこだわるなんてつまらないことだった」と思うようになれば、ご主人も離婚の申し出を引っ込めるかもしれません。よく考えて話し合ったらいかがでしょう。どうしても許せないなら仕方がありません。離婚を承知なさることです。
ご心配の子供の心はとうに傷ついています。せめて離婚の原因をはっきり子供たちに話して十分批判させることですね。どっちみち子供たちも、あなたのあこがれの大学に行けるかどうか――ほとんどの大学は紛争中で恐らく、長びくでしょうから。
(「毎日新聞」1969年9月10日)
※本稿は、『わたしの人生案内』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『わたしの人生案内』(著:沢村貞子/中央公論新社)
恋愛・結婚、人間関係、介護、死別、生きがいについて……随筆家としても知られる名脇役の下にさまざまな悩みが寄せられた。
ときに厳しくも機微にふれる回答には、二度の離婚と三度の結婚を経て、人生の裏表を知った著者の濃やかな優しさがにじむ。
初書籍化となる新聞連載の人生相談83篇に、女性の生き方をめぐる随筆を併せた一冊。





