追っかけと推しは何が違うのか
推し活という語彙が一般化する以前は「追っかけ」がファン行動について使われた。ちなみにこれは明治時代の娘義太夫に対して寄席を何度も観に行った「追っかけ連(2)」から生まれた呼称である。
「追っかけ」の特徴は、集団で動く点である(3)。アイドルの情報交換を行うなかで仲間内、つまり共通の趣味を持った仲間と薄い関係性を構築することも知られている(4)。すなわちファンコミュニティのなかでもつながりが存在している。このファンコミュニティのつながりの深さはジャンルによっても異なり、たとえば宝塚歌劇団のファン同士のつながりは極めて大きな意味を持っていたりする(5)。そして、「推し活」文化もこのような「追っかけ」のファン集団の系譜を継いでいる。
だが「追っかけ」の定義は、自分の居住地から遠く離れた場所で行われる芸能活動の鑑賞や芸能活動以外の場所での接触を試みる行動(2)だった。対して「推し活」は、必ずしも物理的な移動は伴わない。
(2) 彼女たちの舞台を見に行くために何度も足を運ぶだけでなく、移動中やプライベート空間にまで入り込もうとする様子はまさに現代でも「追っかけ」という言葉が想起させるイメージに近い。水野悠子『知られざる芸能史 娘義太夫――スキャンダルと文化のあいだ』中公新書、1998年
(3)吉光正絵「オッカケ・グループの形成─日常生活領域で係わる集団における孤立と非日常的生活領域で形成する集団への同調行動─」(『家政学研究』44、1997年)
(4)江南健志・小川悠貴「アイドルの「おっかけ」は何を追いかけているのか ─アイドルオタクの主観的視点からの実践理解─」(『仁愛大学研究紀要 人間学部篇』21、2023年)
(5)東園子『宝塚・やおい、愛の読み替え 女性とポピュラーカルチャーの社会学』(新曜社、2015年)、坂口幸弘・後藤康恵「宝塚ファンにおける贔屓と悲嘆に関する探索的検討」(『Human Welfare』8、2016年)などに詳しい。