神様からのプレゼント
5月10日に53回目の誕生日を迎えた。健康だし、仕事もあるし、住む家もある。友人とパートナーに恵まれ、趣味のプロレス観戦も思う存分満喫している。88歳になった父親はかろうじて元気だし、我ながら申し分がない。
仕事や趣味に没頭できるのは、健康であるがゆえ。加えて、夫や子どもがいないからだ。自分の家族を心の底から欲しない私には、なにか重大な欠陥があるのではないかと疑った時期もあったが、暫定的にこれでよかったと言える。
誕生日当日は日曜日だったので、昼からひとり街に出て映画とプロレスを観に行った。もういい歳なので、誰かと一緒にいないことを寂しく思ったり、恥ずかしく思ったりしないで済む。
新宿で映画を観たあと、プロレス観戦まで2時間ほど時間があった。せっかくの誕生日、自分にご褒美と称して足裏マッサージにでも行こうと、私はスマホで店を調べながら歩いていた。
ふと背後から声をかけられ振り返ると、白い帽子を被った褐色のスレンダーな外国人男性が微笑んでいた。歳の頃は30代半ばだろうか。観光客が道にでも迷ったのかと思い、笑顔で立ち止まる。
なにか? と表情で問うと、彼は「元気ですか?」と私に尋ねた。予想外の言葉に面喰らう。すると、彼は再びニコニコ顔で「元気ですか?」と尋ねてきた。あ、これナンパだ。
53歳の誕生日に若者からナンパされるなんて、神様からのプレゼントに違いない。私は若い頃からほとんどナンパをされなかった。いつも声をかけられていた友人たちは本当に迷惑そうだったし、嫌な思いもしただろう。男性側も本気でパートナーを探しているわけではない。基本的には軽薄で、褒められた行為でないことはわかっている。でも、されない側はされない側で、私には魅力がないのかと、人知れず悩んだりもするのだ。馬鹿馬鹿しいとわかっていても。だから、思わぬ出来事に心が沸き立ったのは事実。
