『鬼滅の刃』1〜20巻 著:吾峠呼世晴

ここ数年では類のないすさまじい売れ行き

コロナ対策でまだ自粛閉店中の店が多かった5月13日、各地の書店でとんでもない行列ができているのを目撃した人も多かったのではないか。その日は『週刊少年ジャンプ』連載の『鬼滅の刃』最新刊20巻の発売日だったのだ。累計発行部数6000万部を突破し、19巻発売時にはオリコンランキングで1〜19位を既刊が独占した大ヒットマンガ。ここ数年では類のないすさまじい売れ行きだ。これまで、発売日に即売り切れて店頭で買えなくなることが相次いだから、ファンが並びたくなる気持ちはわかる。20巻の初版は280万部だった(7月3日には21巻が発売)。

舞台は大正時代。人を食う「鬼」に家族を殺された少年が、生き残ったものの「鬼」と化した妹を人間に戻すため、苛酷な鍛練を積み、仲間と力を合わせて戦いながら強くなっていく。少年マンガの王道といえるストーリーだが、意外性に富んだキャラクターが魅力的で、「鬼」たちが人間だった頃に背負った業の描き方は容赦ないほど深く、残酷で純粋な命のやりとりの物語に大人も引きこまれてしまう。

2016年に連載開始され、19年に7巻途中までがアニメ化。美しい色彩、スピード感あふれる描写、エモーショナルな音楽が人気を集め、そこからコミックスに手を伸ばす人が爆発的に増えて社会現象を巻き起こした。キャラクターの装束から和装に興味を持ち、「生殺与奪の権」など難しい言葉をたくさん覚えた子どもが、きっと日本中にいる。

そして本作は、この人気絶頂のさなか5月18日発売の『週刊少年ジャンプ』24号で完結した。人気が出ると引き延ばされるマンガも多いなか、きっぱりと幕を下ろした物語を、これから出るコミックスで確かめるのが待ち遠しい。

『鬼滅の刃』1〜20巻

著◎吾峠呼世晴
集英社 ①〜⑪400円、⑫〜440円