がんと診断されると
高野 気をつけていればがんにならないという思い込みもあるので、がんと診断されると、みなさんショックを受けます。
養老 そりゃそうでしょ。普段、考えないから。それだけのことですよ。池田清彦君が書いてますよ。年を取るとは、自分が死ぬってことを納得することだって。人はある年代まで、自分が死ぬということを具体的には考えない。その間は若いんです。彼自身もどこかで気がついたんでしょうね。
高野 若くして亡くなる方も見てきましたが、若くてもその域に達してるというか、ある程度納得して受け入れているように見える方もいる一方で、90歳を過ぎても、「まだ死ぬと思ってなかった」「百までは死ねない」と言う人もいます。
養老 ホスピスやってるお医者さんが言ってたけど、「うちのホスピスでは90歳を過ぎたおじいさんが、『死にたくない』って大声で言ってるよ」と。それもちょっとね。
高野 先生は以前、生きてるのが「1」で、死ぬのが「0」だとすると、年齢からして「今は0.1くらいの感覚だ」とおっしゃっていましたが、それはありありとした感覚なんですか。
養老 そうですね。自分である程度、病気を自覚してから、「はて」と思うようになりましたね。日常生活でも、「これでいいのか」って。若いときは、「怠けてちゃいけない」「頑張んなきゃ」みたいな気持ちがあるでしょ。でも今はまったく逆で、「こんなに頑張ってていいのか」「もうやめたほうがいいんじゃないのか」って。朝起きて、「今日何しようかな」と考える。でも、「そんなこと考える必要ない、寝てりゃいいだろう」というふうには、なかなかならないんですね。
高野 いろいろとお仕事もされてますから、そうでしょうね。
