養老孟司
(撮影:大河内 禎/写真提供:ビジネス社)
2024年に小細胞肺がんを患った、解剖学者の養老孟司先生。2025年3月に再発がんが見つかり、現在も治療を続けています。そんな養老先生と、東大時代の教え子であり医師となった高野利実先生が、約30年ぶりに再会しました。そこで今回は、養老先生と髙野先生が東大時代の思い出やがんとの向き合い方などを語り合った『“幸せ”よりも “居心地”のよい生き方』より一部を抜粋し、お二人の考える「居心地のよい生き方」を対談形式でお届けします。

がんになるのは生きてるから

高野 がんになった患者さんは、自分の生活習慣が悪くてがんになってしまったと、自分を責めてしまう人が多いんです。これには日本人の国民性もあるのかもしれませんが、がんは生活習慣病だというのが刷り込まれているのも大きいと思っています。「がんを予防するために生活習慣に気をつけましょう」というメッセージをよく聞きますが、このメッセージだけが強調されると、がんになるのは、生活習慣が悪かった人だということになり、本人もまわりもそんなふうに思っていると、患者さんは生きづらくなってしまいます。がんになってしまったのだから、これからは生活習慣を見直し、節制して生きていかなければ、と思い詰めてしまう人もいます。

養老 「がん張ります」って(笑)。頑張りすぎる。それがストレスになるんですね。

高野 先生はがんがわかったとき、「何が悪かったのか」とは、思わなかったですか?

養老 思いませんでした。統計を見れば明らかで、年を取ったら2人に1人はがんになるんです。強いて言うなら、原因は「年を取ること」ですよ。極論すれば、生きているのが原因。

高野 確かに、人が長生きをするようになったから、がんが増えました。僕は、小中高校生に「がん教育」の授業をすることがありますが、「がんは予防できる」ということより、「どんなに気をつけていても、誰もががんになりうる」ということを伝えるようにしています。その上で、がんになっても差別されたりしない社会にしていくことが大切なんだと伝えています。がんになったのは誰のせいでもなく、自然なことなのだと。でも、今の社会では、何かのせいでがんになるというイメージはなかなか抜けないですね。

養老 すべてのことに、理由があると思ってるんです。