興味を引く存在
筆者は高校生の頃から日本語や日本文学に興味を持ち、大学では国語国文学を専攻したが、もともと漢字にはそれほど興味はなかった。漢字はそれ自体が複雑な形をしている上に、音読みと訓読みがそれぞれ複数あり、とにかく暗記しなければならないことが多かった。
筆者は暗記は苦手ではなかったが、あまり好きではなかった。一方で日本語の文法、特に文語文法の助動詞に魅せられ、そのしくみには美しささえ感じていた。だから古文は自然と一生懸命に勉強するようになっていた。どうやら何事も自分で充分に納得しないと、一生懸命にはなれない性格だったようである(それは今でも同じなのであるが)。
転機は大学3年生の時で、日本語の音声・音韻を勉強する中で、漢字の音読みには奥の深い世界があることを知った。あの複雑な音読みは、もとになった中国語音から引き継いだものであり、そこにはそれぞれのしくみがあったのである。
こうなると俄然漢字音に興味が湧いてきて、そこからさらに漢字の訓読み、そして漢字の形そのものにも、それぞれ歴史的経緯があることを学んだ。いまや漢字は(日本語文法以上に)筆者の興味を引く存在である。
※本稿は、『漢字と音読みの謎を解く-呉音・漢音・唐音の奥深い世界』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『漢字と音読みの謎を解く-呉音・漢音・唐音の奥深い世界』(著:中澤信幸/中央公論新社)
遣唐使がもたらした漢音、仏教用語に多い呉音、同じ仏教でも禅宗にまつわる唐音。
これらの音が日本に伝来した時代や経路、定着した経緯を、音韻史の専門家がわかりやすく解説。
ややこしくて面白い、音読みの世界への招待。




