楽観論
労働経済学が専門のMIT教授のオーター氏は、生成AIが格差に与える影響について、もっと明るい未来を提示している(Autor, 2024)。過去のコンピューター化は「中くらいの給料の仕事」を減らした。
事務作業や工場の組立作業など、決まった手順で進める仕事がコンピューターに置き換えられたからである。その結果、高い給料の専門職と低い給料のサービス業だけが残り、中間層が「空洞化」したのだ。
オーター氏は、AIがこの流れを逆転させる可能性があると考えている。AIの支援により、例えば準看護師が今まで医師にしかできなかった診断を一部行えるようになる。パラリーガル(法律事務の補助者)が弁護士の専門的な分析を一部担えるようになる。専門的判断が「民主化」されることで、中間層の仕事の中身が高度化し、給料も上がるというのである。
ただし、イデとタラマス両氏の枠組みで考えてみると、オーター氏の楽観論は非自律型AIが支配的な世界を前提としている。AIが自律型へと移行すれば、「民主化」ではなく「代替」が進み、異なる帰結が生じうることに注意が必要である。やはり、これからのAIがどのように発展するかで所得格差に与える影響も異なってくる。