「この治療は、自分に合っているのか」――その答えが分かる時代へ
取材では、ウィリアムズさんの研究を通じて、重いうつ病から回復したスティーブンさんにも話を聞くことができました。「頭の中の8割が、否定的な考えや、死にたいという気持ちで占められていました」――スティーブンさんは、長年、抗うつ薬などの治療を受けても十分な効果が得られず、うつ病の再発を繰り返してきたといいます。頭の中には、「おまえはダメな人間だ」「死んだほうがいい」、そんな否定的な考えが、繰り返し浮かんできたそうです。
彼の人生の転機となったのが、ウィリアムズさんの研究への参加でした。脳活動の特徴を詳しく調べて判明した「うつ病のタイプ」をもとに、抗うつ薬とは異なる治療を受けました。すると、症状は大きく改善したといいます。「治療を受けてからは、頭の中に否定的な考えが浮かんでも、『それはウソだ』と返せるようになりました」――そして、こう続けました。「自分には価値がある、と言えるようになったんです」――長い間、自分自身を否定し続けてきたスティーブンさん。その言葉からは、症状が改善したことだけでなく、自分自身を取り戻していく大きな変化が伝わってきました。
うつ病を「心の弱さ」としてではなく、科学的に理解し、1人ひとりに合った治療へとつなげていく――。これまでのうつ病医療を変える研究の最前線を、番組では詳しく紹介しています。