「マンションの自分の部屋に内側からロックをかけて、ベランダからずっと階下を見下ろしていたのですが、怖くて怖くて何時間も飛び降りることができませんでした。」

「『叩かれ役』の加藤紗里以外はいらない」

いったんメディアに大きく取り上げられると、ちょっと何か発言するだけで、世間からバッシングされるようになりました。そこで誘われたこともあり、仕方なく、芸能事務所に所属することにしたんです。社長には、「可愛いだけの人間、おっぱいが大きいグラビアの女はゴマンといるから、『叩かれ役』の加藤紗里以外はいらない」と繰り返し言われていました。

今でも忘れられないのは、カンニング竹山さんの三軒茶屋での飲み屋のロケです。竹山さんが「紗里ちゃんってさ、実は良い子だよね。そのまんまでいいんじゃない?」と言ってくれたんです。精神的に弱っていたこともあり、とっさに気の利いた返しもできずに、沈黙のまま出番が終わってしまって。すると社長に「もう一度乱入して、竹山さんを挑発してこい! 25年間生きてきたお前は俺が生ゴミとして捨てた!」とメチャクチャ怒鳴られました。

番組は生放送で、迷惑なのはわかっていたのですが「すみません! さっきの紗里は間違いでした!」と言いながら、ロケ現場に無理やり戻っていったんです。社長のダメ出しに「ひどい、悔しい」と思いましたが、実際、バラエティ番組で上手にトークもできなかったし、もっともだなと思ったこともたくさんあります。

そんな毎日が続くうち、いつの間にかすごく疲れて、死にたいと思うようになっていました。マンションの自分の部屋に内側からロックをかけて、ベランダからずっと階下を見下ろしていたのですが、怖くて怖くて何時間も飛び降りることができませんでした。

救急車や警察が来て、下にマットも用意されて。広島から両親も呼ばれ、下から母に「紗里ちゃん、お願いだから飛び降りないで」と泣いて説得され、やっと鍵を開けました。それ以外にも、信頼していた親友に裏切られたりして、もう一度自殺未遂を起こしています。

事務所の社長も、「そんなにつらかったのならもうやめていいよ」と。でもその時母が、私に意外な言葉をかけたのです。

「紗里ちゃんね、このまま広島に帰るのもいいけど、帰っちゃったらね、そんなつもりなかったのに、芸人さんを踏み台にしようとして、消えていった人になっちゃうよ。それじゃあ悔しいんじゃない? 芸能界で、もう少し頑張って『タレント加藤紗里』になって、踏み台より高いところに行ったら紗里ちゃんの勝利かもしれないね。帰ってくるのはいつでもできるよ」