リスクが低いと思いたい
リスクを低く見積もってしまうのは、自分がおこないたい行動との整合性に左右されるからである。海や山での遭難事故が後を絶たない。天候が悪くなったときにあきらめる勇気が必要なのだが、「せっかく日にちを決めてここまで来ているのに」という思いがあって、山に登りたいとか釣りのため海に出たいとかいう気持ちになる。しかし、それらの行為を実行してしまうには、災害リスクが高いという認識と整合がとれなくなってしまう。
このような状態を心理学では認知的不協和という。認知的不協和が生じると、人間はその不協和を解消するように自分の認知を変えてしまう。そのときの天候を考えたとき、災害リスクが高いとほんとうは思っていても、登山や釣りをする行為と不協和が生じるので、災害リスクは低いと認知を変えてしまうのである。
一方、海や山で現場の管理をする人たちは、自分たちは登山や釣りをするわけではないから、認知的不協和が生じない。そのため、正しくリスクを認識し、断念することを進言するが、当事者はリスクが低いと思いたいのである。
事前の安全行動を省略してしまったために招いてしまったエラーである安全行動省略エラーや、効率を優先させて失敗してしまうエラーである効率優先エラーも同じである。確認や事前の防御策は面倒でしたくない、ちょっと危ないけどスピードを上げたい、といった思いがあるから、リスクを低く評価してしまう。