「役者さんというのは有名無名にかかわらず、次の出演が決まっている、撮影予定がある、それが明日への力。だから、プロデューサーとしてできるのは、次の約束なんですね」(小泉さん)

撮影予定がある、それが明日への力

重松 「好きでやってるんだろう」という言われ方もしますが。

行定 たしかにその通りです。さっきの話の主演女優は、プロデューサーの「今度、絶対にまたやるから」の言葉に、「それを信じて、バイトします」と嬉しそうに答えたそうです。生活ができなくなることよりも、舞台に立つ、その場所を失ったことのほうがつらいんですよ。

重松 よって立つものがなくなる。

小泉 役者さんというのは有名無名にかかわらず、次の出演が決まっている、撮影予定がある、それが明日への力。だから、プロデューサーとしてできるのは、次の約束なんですね。

重松 お話をうかがっていて、ベンヤミンという歴史学者の言葉が浮かびました。「暗闇の中を歩くときに支えになるものは橋でも翼でもなく、友の足音である」。見えないけれど、一緒に歩いている仲間がいると思えば、それがいちばんの力になるのですね。

小泉 今、世界中が同じ状況にありますから、違う国の人たちともそういうつながりが生まれやすいかもしれません。

(2020年7月30日収録)


※この座談会の完全版は、2020年9月23日発売の『婦人公論』10月13日号に『婦人公論井戸端会議2020」として掲載します

重松清さんが司会を務める「婦人公論井戸端会議2020」は毎月第4火曜日発売号に掲載