2014年に生まれた双子の桜浜・桃浜(写真提供:アドベンチャーワールド)

失敗の経験も

快活な熊川さんだが、過去にはつらい経験があった。「05年8月に梅梅が双子を産んだのに、私はそのうちの1頭に気づかず死なせてしまいました。産声もなく、出産の力みもなかった。抱いていたのも見えなかったのです」。

たった66グラムの小さな命だったが、この後悔が大きな教訓になり、観察力を意識するきっかけとなった。

現スタッフの遠藤さんにも失敗の経験がある。赤ちゃんパンダの検査や治療に時間がかかり、赤ん坊を奪われた良浜が情緒不安定になってしまったのだ。こうした場合、最悪、母パンダが子育てを放棄することもあるという。親元に戻すか、治療を続けるかの判断は難しい。

とりわけ2年前に生まれた彩浜は、誕生時に75グラムしかなく、危険な状態だった。だが、遠藤チームは交代で24時間見守り、立派に成長させた。良浜も順調に回復。熊川さん、遠藤さんをはじめとするスタッフの試行錯誤と、粘り強い努力が世界一のパンダファミリーを支えているのだ。

生まれたばかりの彩浜。わずか75グラムしかなかったが、今では立派に成長した(写真提供:アドベンチャーワールド)