「『トーマの心臓』と『風と木の詩』は読みなさい」

魔夜さんの代表作『パタリロ!』は、架空の国であるマリネラ王国の国王を主人公に据えた、スパイアクションあり、SFあり、オカルトありのドタバタコメディだ。中でも繊細な線で描かれる美少年どうしの愛に人気が集まった。


マリエ 峰央さんは、よく「少年愛は非現実的でピュアなところが魅力なんだ!」と言ってたよね。何しろ、子どもの頃に「パパから大事なお話があります」とまじめな顔で言われて、何だろうと思ったら……。

魔夜 「『トーマの心臓』と『風と木の詩』は読みなさい」

マリエ ……おかげで愛に性別は関係ないということを学びました。

魔夜 あれは、もはや文学ですよ。いつの時代にも通用する作品は、勉強のために読んでおいたほうがいいと言った記憶がある。

マリエ しかも、家に『麗人』のようなハードなBL雑誌が毎月届いていて。

魔夜 連載を持っていたからね。マリエもよく小学生の頃から覗いてたじゃない?

マリエ ……おかげで、少年愛だけでなく、マッチョ同士の愛もいけることを学びました。気づけば、BL同人誌を学習机に並べるようになって。私が“腐女子”になってどう思った?

魔夜 本人の自由だから何とも思わない。僕も言える立場にないし。

マリエ 19年は2月に『翔んで埼玉』の実写映画の公開が控えてるよね。

魔夜 最初はアニメ化の話が進んでいたのに、いつの間にか実写映画になっていた。ただ、美形の主人公がGACKTさんと聞いて、「これだ!」と思ったよ。そもそも作品自体が壮大な虚構なわけ。それだけに、主人公がそこら辺にいる薄っぺらなイケメンじゃどうにもならない。

マリエ その言い方まずいから。埼玉に対するディスり方がハンパないよね。「埼玉県民には、そこらへんの草でも食わせておけ!」だもの。

魔夜 僕の地元は新潟なんだけど、20代の頃仕事が忙しくなり、東京に出てくることになったんだ。そこで『花とゆめ』の編集長に相談したら、「わかった。じゃあ所沢にしなさい」と。

マリエ 所沢は東京じゃない!

魔夜 なんのことはない、編集長が所沢に住んでいたんだよ(笑)。今でこそ所沢は大きな駅だけど、当時は何もない田舎だったから驚いた。

マリエ 早く埼玉から脱出したいと思い続けて、その鬱憤を晴らすためにあの作品を描いたんでしょう?

魔夜 だからかな、横浜に引っ越してからは描けなくなった。さすがに横浜に住みながら埼玉を悪く描けないからね。

マリエ 今年は映画『パタリロ!』も公開される。こちらも主演の加藤諒くんという逸材あっての実写化。

魔夜 以前、宝塚でやろうかって話が出たことはあるんだ。でも、美形はたくさんいるけどパタリロがいない。そこが唯一にして最大のネックだった。ところが突然、加藤諒くんが登場して「いたーっ!」と。彼以外にパタリロ役はできない。

マリエ 16年に舞台化した時も彼が演じて、パタリロそのものだった。