ブレーメンはどこにあるのか、わからなかった。わからなかったけど、わたしたちは、ブレーメンをめざして歩いた。
「年はとりたくねえな。ブレーメンなんぞ、昔は半日もありゃあ行けたもんだ」
ねこがいった。
「ブレーメンへ行ったことがあるのかね」
「それがよく思いだせねえがね」
ねこのひげは、すり切れて、毛穴だけになっている。
「おれの行ったころは、ブレーメンは戦争していたぜ。コケコッコー」
にわとりがいった。
「戦争したのは、ありゃあたしか、クレーメンだ」
犬がいった。
「そうだ、クレーメンだ。コケコッコー」
わたしたちはずいぶん歩いたが、ブレーメンはどこだかわからなかった。
森の途中に、どろぼうの家があった。
わたしが前足を窓わくにかけ、背中に犬が乗り、その上にねこがよじのぼり、にわとりがねこの頭に止まって、中をのぞきこみ、いちどきにどろぼうにたずねたもんだ。
「ブレーメンはどこかね」
どろぼうたちは、腰をぬかして、家を飛びでて行った。
わたしたちは、たしかに、
「ブレーメンはどこかね」
と聞いただけだ。