「ひとりの時間もありつつ、寂しいときには気をつかわずに済む人が来てくれて、こっちが満足したら帰ってくれるっていうのが一番いいね。」(大久保さん)

大久保 芸人は誰が好きですか?

遠野 かまいたち、とか。あの方たちのコントは短篇にできそうな気がします。ウェットスーツを試着したけど、脱げなくなったネタとか。

大久保 あったね(笑)。小説にするということは、笑いだけじゃなくて、感情を動かすテイストも入ったりするわけですよね?

遠野 ウェットスーツが脱げないと通常の社会生活ができなくなるので、笑える部分に加え、疎外感みたいなものが書けるかと。

大久保 その構想の中では、ウェットスーツがずっと脱げない状況ってこと?

遠野 はい。手首のところで止まり続けている状況です。

大久保 うん、読んでみたい(笑)。遠野さんは、なんで小説家を目指そうと思ったの?

遠野 高校から大学にかけてバンドを組んでギターを弾いていたのですが、うまくならなくて。それと、バンドって人前で自分を見せるわけですが、それが私には無理だと思い、文章なら普通に生活をしていれば書けるので、小説を書いてみることにしました。

大久保 ステージでみんなの視線を浴びるのは、気持ちよくはなかったんですか?

遠野 私はそこまでいけなかったです。ライブって当然ですけどライブ感が求められるので、それもプレッシャーでしたし。でも小説は、ここが違うなと思ったら修正すればいいし、書いているところを誰にも見られないし、それがいいなと。

大久保 小説に関しては根拠のない自信があったけど、バンドでは感じられなかったんだね。

遠野 そうですね。ギター教室にも通ったんですけどね。