農薬をいっさい使わない自然農法のため、定期的に除草作業を行う。一日中、田んぼで過ごすことも
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後悔のない選択をしなければ


私の父が末期がんを患ったのは、それから数年後のことです。アメリカでの生活を捨てることには迷いもありましたが、「後悔のない選択をしなければ」と帰国を決意しました。住む場所の条件は「農業ができる田舎」。そして、女優という仕事を考えて「東京にアクセスしやすい」こと。このような経緯で、富士山麓の朝霧高原での生活が始まったというわけです。

あれから15年。お米や野菜を育てながら、自分の身体に向き合って生きてきました。実は、幼いころから病弱で、日光アレルギーやひどい口内炎にいつも悩んでいたのですが、その私はどこへ行っちゃったの？　と聞きたくなるくらい、身体の不調はすべて解消。そればかりか、もともと感情の起伏が激しくて自分でもそれを持て余していたのに、コントロールできないようなアップダウンを感じることもなくなったのです。

食や自然に関心を持ったおかげで、何もかも変わりました。もしも私が身体に問題を抱えていなかったら、おそらくここまで真剣に農業にたずさわることはなかったでしょう。

こんなお話をすると、必ずこう言われます。女優の仕事はどうしたんだって（笑）。お芝居への熱意は変わりませんが、スタンスが以前と変わってきたのは確かです。女優の仕事って、年齢を重ねるに従い「これだ」と思える役との出合いが若いころと比べて減ってしまうのかもしれません。これはしかたがないのですが、そうなるとほんの一握りの役を求めて、たくさんの人が競争することになります。

これって、「演じることが好き」だから純粋にそれを追いかける、という本質とはずれていますよね。それなのに、無理やりそこに幸せを求めようとすると自分が苦しくなってしまう。そればかりか、本来あるべき幸せに気づかず、日々を嘆いて過ごすような人生になりかねないのではないか。だったら自分にとっての幸せを一所懸命追求したほうが、後悔しない人生になるんじゃないかと思うんです。