食生活を見直し、身体の不調が消えた
私の身体は、農業に出合って大きく変わりました。単身でアメリカに住んでいた、20代終わりのころのことです。
私はハリウッド映画『ヒマラヤ杉に降る雪』のオーディションで主役を得たことをきっかけに、アメリカで勝負したい気持ちが膨らみ、27歳で日本を飛び出しました。
希望に燃えていた最初のうちはよかったのですが、オーディションで何十回も連続で落とされると、さすがに気持ちが塞ぎ込んでいきました。そんなとき、追い打ちをかけるような出来事が。健康診断を受けたら、お医者さんに「がんになる可能性があるため要経過観察」と告げられてしまったのです。「なりますよ」ではなく「なるかもしれない」。
でも防ぐ方法は教えてもらえず、様子を見ていくしかない。この曖昧な状態に、ただでさえ塞いでいた心がドーンと落ち込んでしまいました。
何もやる気になれず、ぼーっと天井を見ていると、突然天井が落ちてくるのではという不安に襲われる。知らないうちに涙が出てくる。いつも焦燥感にさいなまれる――。気がつけば、眠るのにも薬が必要なほど、とても不安定な生活になっていました。
そんなとき、トロント国際映画祭のパーティーに出席する機会があり、乳がんで闘病中の女性に出会ったのです。彼女は、自分のがんが2年以上も大きくなっていないと笑顔で説明してから、「私はオーガニックなものしか食べていないのよ」と言いました。彼女があっけらかんと話す様子に驚きつつ、ハッと目が覚めたのです。
私はいったい何をやっているんだろう。まだがんになってもいないのに落ち込んで、現代医療に頼りきりになっている自分が恥ずかしくなりました。すべては自分なんだ、自分の身体に責任を持たなくては――。この出来事をきっかけに農業への興味が芽生え、プランターで野菜作りをスタート。食生活を見直したことで、体調は次第に回復していきました。