モントリオール世界映画祭に出席した際、レッド カーペットを歩く

レッドカーペットで考えていたこと

ハリウッドでの演技が評価され、レッドカーペットの上を歩いていたときの私。女優としては人生最高の瞬間であったはずなのに、心身の不調とがんへの不安を抱えていたために、ちっとも楽しめなかった。

あのとき私が一番欲しかったのは、「10年後もきっと元気でいられる」という確信みたいなもの。お金や名声がいくらあっても手に入れられるものではない幸せ、それが「健康」の2文字でした。その気持ちをあのときに感じることができたから、私は今何をやっても幸せなんです。お金が稼げていても、いなくても。だから女優の仕事も、一所懸命取り組めるお話であれば積極的にやっていきたいです。

「幸せ」を感じられるかどうかは、その度合いを測るものが自分の側にあるかどうかによると思います。「お金」のような表面的な評価に流されすぎてしまうと、人は満たされないのではないでしょうか。

私はもともと「欲」が強い人間です。人が持っていないものが欲しい。自分にないものを持っている人がうらやましい。だから若いころにハリウッドを目指したし、外国の映画に出て、他の人ができないことをやってみたかった。ある意味、人からの評価に頼っていたわけです。

それで生まれたものはなんだったのか――と考えると、本当の自分の心の充実感とは結びついていないことに気がつきました。それは、一日が終わるとき、「ああ、今日もいい日だった」と思えるかどうかです。いろいろ回り道をしたおかげで、はっきりそれが見えるようになったと思います。