どうしたら女性が幸せに生きていけるか

『婦人公論』は私よりもちょっとだけお姉さんで、今年創刊105周年を迎えるそうですね。私は、デビュー直後でまだ無名の作家だった頃、「徳島ラジオ商殺し事件」の現地ルポルタージュを書く機会をいただいたことがあり、とても貴重な経験となりました。

この100年ほどの間に、女性の地位は大きく変わりました。私が若い頃は、女は男に従属するしかないし、人権も認められていませんでした。働く場所も、電話交換手くらいしかなかった。

でも今では、自分が働いて家族を養っているというような頼もしい女性がたくさんいますね。秘書のまなほも、普段は子どもを保育園に預けて仕事をしてくれていますが、昔は子どもを預けて働くなんて考えられませんでした。女性が働く環境は、まだ不十分な点はあるかもしれないけど、100年の間に大きく進歩したと思います。

日本よりは男女同権が進んでいるはずのアメリカでも、女性大統領はまだ誕生していませんが、今年カマラ・ハリスさんが歴史上初の女性副大統領に就任します。これをきっかけに、たくさんの女性が後に続くことでしょう。

日本の女性政治家も、決して数は多くありませんが、頑張っている人が少しずつ増えてきています。20年の4月、私の出身地の徳島市で、36歳の内藤佐和子さんが史上最年少で市長に当選しました。徳島県内の長に女性が就くのは初めてのことだとか。やはり皆さん、若い女性の柔軟な発想に期待する気持ちがあるのでしょう。

私は作家になって以来、一番力を入れた仕事は近代女性の伝記でした。田村俊子をはじめ、岡本かの子や『青鞜』の女性たちを次々書きました。伊藤野枝を書いたのは、自分でも誇らしい仕事をしたと思っています。『源氏物語』の現代語訳をしたおかげで、王朝の女性たちの素晴らしい生き方も教えられました。

100年生きてつくづく思うことは、日本の女性の資質の素晴らしさです。その末端に生きた自分はなんと幸福だったかと思います。