フジコさんと暮らす猫たち

急逝した最愛の弟にまた会えると信じて

ーースウェーデン人の画家の父と、日本人ピアニストの母との間に、ドイツ・ベルリンで生まれたフジコさん。5歳の時、家族で日本に帰国するも、第二次世界大戦が始まる前に父は強制送還されてしまう。

その後、ピアノを教えながら女手ひとつでフジコさんと弟のウルフさんを育てた母、大月さんは、フジコさんのピアノの才能に気付き、厳しい指導をするようになる。戦中・戦後、外国人の父を持つフジコさんはいじめにもあったが、ウルフさんとは幼少期を支え合って仲良く過ごした。


20年には大きな別れもありました。8月に弟の大月ウルフが急逝したことは、まだ信じられない。1年くらい会えていなかったの。今も「オーイ!」と大きな声で、ここに入ってくるんじゃないかと思ってしまう。幼い時はケンカもしたけれど、思い出を話せる家族がいなくなるのは本当に寂しいこと。

弟は俳優としてそこそこ人気者でしたよ。でもね、彼は癪に障るとすぐに相手をぶん殴るものだから、あちこちで出入り禁止になってしまって。私のコンサートのプロデュース業もしてくれていたけど、サントリーホールも東京オペラシティもNHKホールも、全部出入り禁止。仕事もたくさん失って、バカみたいでしょう? だからあまり出世しなかったな。もったいないわよね。

そんな弟を純粋だと褒める人もいたけど、私は彼とは正反対で、周囲とはうわべだけで付き合うようにしてるのよ(笑)。口は災いの元。本当にちょっとしたことで相手を傷つけてしまうことがある。それがとても嫌で、だから何かあってもグッと耐えて、相手に恨みを持たないよう心がけています。

でも、弟もすごく悪いことをしたわけじゃない。地獄には行ってないはずよ(笑)。今頃きっと天国で母と会ってるだろうし、私もまた会えますよ、絶対にね。