いくつになっても楽しいことはある

ーーピアノを愛し、猫を愛し、生涯独身を貫いてきたフジコさん。一方で「四六時中恋をしていた」とも。「今、いちばん楽しいことはなんですか?」との質問に、少し顔を赤らめてこう答えた。


あまりこういうことを言うのは良くないのかもしれないけれど、やっぱり恋人と一緒にいる時間は幸せね。

私は昔から惚れっぽくて、すぐに恋をしてしまう。若い頃はずいぶん苦労したわ。一度なんてほかに恋人がいるドイツ人の男に騙されて、有り金全部に、アパートまで取られたことだってある。でも私は、ああ、もうこいつはダメだなと思ったらすぐに身を引くの。憂鬱なのは一日くらいだけ。(笑)

今の恋人は、近くにいるし毎日会えるから、楽しいですよ。尊敬できる人だし、お互い猫が好きで、いろんな話をするわ。

でも、周りの人を見ていると、みんな「結婚すると相手に飽きる」って言うのね。どうして? 猫を飼っていて、その猫が歳をとって醜くなったからって飽きないし、捨てようなんて思わないでしょう? きっと、みんな相手に期待しすぎなのね。

私は好きな人と一緒にいたら幸せ。だけど、依存しすぎることはないわね。スウェーデン人の父の血が入っているでしょう。スウェーデン人は孤独を愛するの。私も一人の時間が絶対に必要。絵を描いたり考え事をしたりね。

歳を重ねていくと、若い時には気がつかなかった自分に気づくことができる。似合わない服を着てバカをやったりしない。だんだん自分のダメなところも直していけるじゃない。だから私は歳を重ねている人のほうが好きね。それに、いくつになっても、楽しいことはある。

人間なんて、矢のような人生で、あっという間に歳をとって死んでしまうけど、それで終わりじゃないもの。私は、この世での記憶や自分の才能、千代紙やなんかで一所懸命作ったものも全部、せっかくだから天国に持っていきたいわ。誰かに庭で焼かれたら悔しいじゃない。(笑)

聖書に書かれているように、天国じゃお好み次第、どんな家に住んでもいいのよ。私は、子供の頃に住んでたような、日本家屋と洋館を合わせたような家に住みたいの。ピアノもあってね。父や母や弟や、ファンの人たちを呼んで演奏会を開きたいわ。