父親と義母の墓の性根を抜いた直後に…

7月の暑い日、性根抜きの立ち会いに、1人で行きました。日帰りです。ぼくが生まれた村に、東京から日帰りで行けるということ自体、昔ならまず考えられないことでした。

朝5時半頃に家を出て、のぞみで岡山に向かいました。山陽本線に乗り換えて、吉永駅に着いたのが12時前でした。あらかじめ電話を入れておいたので、お婆ちゃんの長男が車で迎えに来てくれました。長男の奥さんが作ってくれた昼食をいただいていると、お婆ちゃんが出て来て、ティッシュで包んだものをぼくの手に握らせました。あとで開いてみると2万円入っていました。隠居しているお婆ちゃんにとって、2万円は大金です。それでも、墓を作る足しにと渡してくれたのです。墓を作ることにして良かったと思いました。

長男の車で、松本寺にお坊さんを迎えに行き、まず母親の墓の性根を抜いてもらいました。ヤブ蚊が多い中、30分もお経を上げてくれました。続いて父親と義母の墓の性根を抜いてもらいました。その直後、雷とともに激しい夕立になり、みんなで車の中に逃げ込みました。10年も放ったらかしにしたので、父親か義母が怒っているんじゃないかと思ったりしました。

山は変わらない(写真提供:末井さん)

それから1ヵ月して、美子ちゃんと岡山に行きました。墓石の工事が終わったので、性根を入れてもらうのです。泊まるのは「八塔寺ふるさと村」の、民宿もやっている高顕寺です。夏休みも兼ねて3泊することにしました。

岡山からレンタカーでお婆ちゃんの家まで行き、長男の車に乗せてもらって松本寺に行き、性根を抜いてもらった副住職に同乗してもらい、まずは父親と義母の墓に行きました。墓地の面積が狭いので夫婦墓にしたのですが、それが正解でした。父親の妹さんと従兄弟が来てくれていて、みんなで見守る中、副住職にお経を上げてもらい、墓に性根を入れてもらいました。

続いて母親の墓に行きました。母親の墓は、いかつい感じにしたくなかったので、美子ちゃんのアイデアで頭を丸くしました。可愛いお墓になったと思います。副住職のお経で性根が入りました。