まさか自分が結婚という形を選ぶとは
私はどちらかというと、同じ仕事の仲間と集うよりは、作品ごとに人間関係を清算するように生きてきました。一緒に作品に携わっている間は、もちろん皆さんに気持ち良く仕事をしていただきたいと思いますし、円滑なコミュニケーションが大切だと思っています。
その一方で、仕事を終えてまで過度に親密になることは控えてきました。仕事で一番いいパフォーマンスを発揮するには、あえてプライベートでは接触しないほうがいいと考えています。
移り気な性質のため、あまり親しくなりすぎると、共演した際に新鮮味を感じなくなってしまうんですね。バックグラウンドが見えすぎると、シリアスな場面でも笑ってしまって演技にならなくなりますし。
仕事を越えて通じるものがあり、わずかながら交流を続けている方もいますが、その一方で、まったく異なる立場の方と親しくなることが多いです。どなたかが書かれた物語を伝える媒介のような仕事をしており、虚構の世界にいることが常だからこそ、現実の世界で地に足をつけて生きている方との接点を失いたくないと思います。
あるいは自らの手を用いて美しいものを作り出す、器の作家さんやアーティストたちのお話に耳を傾けることが好きです。
いずれにせよ、どこかのコミュニティーに縛られることなく、お互いに自立した自由な関係を好んできました。
もちろん困った時には手を差し伸べるけれど、各々を尊重し合うからこそ、依存とは無縁の関係が育まれています。
10代の頃、確か村上龍さんの小説の登場人物がどこにも属さず誰にも縛られない生き方を旨としているのを読み、それに少々感化されたのかもしれません。
そんな私が結婚という形を選び、新たな家族を築くことになるとは、自分でもまったく予想外の展開でした。