「別れた男女がお互いの新しいパートナーとの暮らしを尊重しながらも、協力して子育てを行うことは、ヨーロッパではごく当たり前のこと。」

個人の尊重とコミュニケーションを重んじること

オーストリアで暮らすようになって感じたのは、他人との距離感の、日本との違いです。一般的に「ヨーロッパは個人主義」というイメージがあると思います。それは事実ですが、そのうえで皆さんとてもフレンドリーにコミュニケーションを取ります。

たとえば町で偶然目が合ったら、知らない人でも「ハロー!」と挨拶するのが当たり前。スーパーで買い物をする時も、レジ係の方と一切会話をしないと、変な人だと思われてしまいます。皆さんレジ台の前で、何かしら会話するのが普通。

一方で、保守的なお国柄ゆえ人種差別や、移民や難民に対する排外主義が皆無かといえばそういうわけでもなく──いろいろ難しい問題もはらんでいますが、私の場合は外国の方と家族になったことで、文化や所属する国、言語が違うからこそ許せることがたくさんあり、かえって気が楽な面もあると気づきました。

同じ日本人同士だと、つい「言わなくてもわかってほしい」と期待したり、「わかってくれているはず」と勝手に思い込んでしまったりしがちです。きちんと言葉にしてコミュニケーションをしなければ、他人の気持ちはわからないはずなのに。

私自身、過去には人様に過剰な期待をし、それが叶えられなかったことで落胆してしまった経験もあります。その点、言語も文化も異なると、最初から「違って当然」「ときにすれ違うのも仕方がない」と思えるのです。