コロナ禍で、自宅で料理をする時間も増えた。天気の良い時には、大きな空と山々の稜線を眺めることができるテラス席で食事を。花瓶には庭で摘んできた花を飾って

家族4世代で集まって

8歳になったJが、私を理解するためにとても努力してくれていることを、ひしひしと感じています。しかし出会った当初は、齟齬がなかったといえば嘘になります。Jは私が作った料理を食べてくれないことも多々あり──すると私は、自分自身が否定されたような気がして落ち込んでいたのです。

でもそのうち、彼女は決して私を否定しているのではなく、単に好き嫌いが多いのだとわかってきました。たとえば朝の卵は、エッグスタンドに立ててスプーンで食べるのが好み。固ゆではダメで、半熟が大好き。かといって白身がゆるすぎると、食べてくれません。

日本ではそういった子どもの好みはワガママとされ、好き嫌いせず食べるよう叱るかもしれません。しかしヨーロッパでは、それを個性と捉えるようです。今では彼女の希望を聞き入れつつ、彼女が出会ったことのない料理もなんとか食べてもらえるよう工夫しています。メンチカツや春巻きを、食べず嫌いせずに平らげてくれた時は、本当に嬉しかったですね。

夫の両親はベルリンで暮らしているので、そう頻繁に会いには行けませんが、たまに訪れると心から歓迎してくれます。義父はオーケストラ所属のヴァイオリニストとして世界各国を訪れ、来日もしていますから、もともと外国人に慣れているのでしょう。異文化に対してとてもオープンなファミリーなので、恵まれているなと感じています。

義母は、家族に台所仕事を手伝ってほしいなどとは露ほども思っていないようです。私も、手伝うとかえって義母に気を遣わせると思うので、お客さんに徹しています。

夫の姉には3人の子どもと孫までいるので、4世代で集まって食事をすることも。どこにも属さない根無し草のような私にこんな日が来るなんて、想像もしていませんでした。