人生をなおざりにしない
夫とは、1年のうち約半年間は離れて生活しています。彼も私も、それを寂しいとは思っていません。彼もアーティストとして一人の時間が必要ですし、私もそう。常に一緒にいなくても、お互いに自立したうえでよい関係を築きたいというのが、私たち2人に共通した考えです。その点で一致していなければ、たぶん結婚していなかったでしょう。
それまで私が犠牲にしてきた「生活」というものが人生に入ってきたことで、かえってオンとオフの切り替えが楽にできるようになったと思います。私は先天性臼蓋骨形成不全という股関節の問題を抱えており、痛みで歩行が困難になることも。
そのような肉体的なハンデがあるがゆえに、常に身体のメンテナンスを必要とするのですが、コロナ禍でそれもままならなくなりました。そのうえ庭仕事で無理をしたため、ついには身体が悲鳴をあげてしまい……。オーストリアの理学療法士に、身体は鍛えると同時に緩めることもとても大事だと指導されました。
体も心も緩めるときは緩めよう。そして、何でもない日常をこそ誰はばかることなく存分に楽しもう──そう思えたことで、私の人生は大きく変わったと思います。日記の中にも、こう記しています。「たかが知れた演技のために人生をなおざりにして来た愚か者だったのだ」と。(笑)