なにやらとても怪しい雰囲気…

自分でも驚くのだが、私はいつも諦めが早い。諦めが早いうえに、かなりの楽天家でもある。この性格が功を奏して、今まで幾多の困難を無事乗り越えることが出来てきたような気がしている。

このときも、心配しても仕方がないし時間の無駄だと思い、あっさり考えるのを辞めた。検査は翌日なのに、前日から心配したって無駄なのだ。とにかく、すべて、明日の朝に考えればいいと思った。この時点ですでに、インターネットで検索することすら辞めていた。検索しても余分な情報が多くて不安になるだけだからだ。だから、検査のことは忘れ、仕事をしたり、本を読んで不安を誤魔化した。

カテーテル検査の前は「朝絶食」(写真提供:村井さん)

翌朝、指示されていた時間の15分前にしっかりと準備を整えた私は、ベッドに座り、迎えの看護師さんが来るのを待っていた。自分で歩けるほど元気だったが、車椅子を用意してくれていたのでありがたく乗せてもらった。そして、看護師さんと一緒に、エレベーターで階下に向かい、薄暗いフロアに辿りついたのだった。

なにやらとても怪しい雰囲気だった。温度も若干下がったような気がした。廊下は薄暗く、しんと静まり返っていて、私と看護師さん以外、誰もいない。看護師さんの押す車椅子は、迷路のような通路を右に曲がり、左に曲がり、どんどんと進み、何カ所もの自動ドアを通り抜け、そして分厚い鉄製のドアの前に私を連れて行った。看護師さんはインターフォンのボタンを押した。

分厚い鉄のドアを開けて出てきたのは、めちゃくちゃに明るい男性だった。

「おはようございまーす! 今日は、こちらでカテーテル検査を行いまーす!」