明るいキャラクターは不吉な予感

きっと、私を不安にさせないよう気を遣ってくれていたのだろう。しかし私は余計に不安になった。ホラー映画を見過ぎているせいで、すべてが悪いことが起きる前兆のように思えたのだ。

この深刻な場所で、この明るいキャラクターは不吉な予感以外の何ものでもないと考えた。私を連れてきてくれた看護師さんはいつの間にか消え、妙に明るい男性が私の後ろにあっというまに回りこみ、私を部屋のなかに連れて行った。

心臓手術の前の年、今は亡き両親、兄とともに旅行に出かけたときの村井さん(6歳)。「この頃から、両親が私を連れていろいろなところに行くようになりました。何かを覚悟していたのかもしれません」

そして私はようやく気づいた。ここは、手術室のように、しっかりと設備の整った処置室で、今日の検査は、簡単に終わるような類いのものではないのだと。私の想像以上に多くの技師や看護師が待機していた。もわっと温かい空気が充満していた。そして、まるで大きな十字架のような形のベッドが、部屋の真ん中に置かれていた。その周辺には多くの器材が並んでいた。ベッドの足元には、小さな階段が設置されていて、「はーい、ここからどうぞ~」と言われ、車椅子から立ち上がった私はその十字架に横たわった。

横たわった直後、本当に数十秒も経過していないあたりで主治医がどこからともなくすっと登場し、そして、「左を向いて下さいね。消毒します」と言いつつ、左を向いた私の首のあたりに、消毒液をたっぷりと塗りつけた。そして、ふわりと緑色の厚手の布を私の顔から首のあたりにかけてくれた。温かかった。「麻酔しますね」と静かな声が聞こえ、間髪入れずに首に針が刺さった。