大坂にとってのアイドルはセリーナ・ウィリアムズ
2014年5月から、フロリダ・ボカラトンにあるテニスアカデミーで、大坂は初めてプロコーチから指導を受けるようになったが、コーチの名前を聞かれても、即座に思い出せない場面も見受けられた。ジュニアの大会には一切出場せず、一般のプロ大会にトライし続けた。これは、世界的に有名なプロテニス選手であるウィリアムズ姉妹のジュニア時代と同じ転戦の仕方だった。
「ジュニアの大会に出ないのがマスタープラン。父が決めたことなので、私はそれに従っているだけです」とレオナルドさんを信頼していた大坂は、転戦の時にはいつも父親と姉と3人で行動していた。
自他共に認める完璧主義者である大坂は、大舞台で強さを発揮できるプロ向きのメンタルを持っている。「私は、何でもちょっとでも良くなりたいと考える人間だと思っています」という上昇志向もある。
そんな大坂にとってのアイドルは、セリーナ・ウィリアムズ。グランドスラムで23回の優勝を誇り、女子テニス史上最強といわれるアメリカの選手だ。大坂が成長していく過程で、コートで力強くプレーするセリーナはいつも選手としてのロールモデルだった。
「彼女がいたから、テニスを始めたと思います。セリーナが自分にとってはナンバー1の存在です」と大坂は常にセリーナの背中を追いかけていた。
そして、2018年USオープンで大坂が初優勝し、日本人として初めてグランドスラムタイトルを勝ち取った時の決勝の相手がセリーナだったのは、何とも運命的な巡り合わせだった。
試合直後のセリーナとの抱擁では、大坂は自らを「子どものようだった」と感じながら、試合中には倒すべき対戦相手であったセリーナが、勝敗が決した後には再び自分の憧れの存在に戻っているのを認識していた。