真剣な表情で仕込みをする河合さん。完成品を積んだ台車も1人で運び、身のこなしが軽い

毎日真剣に、できることを全うする

現在バーバラはうすで働いている女性は、三木さんも含めて14名。職場の最高齢は、河合孝子さん(71歳)だ。レジ打ちの仕事から始めて、いまは厨房でワッフルやスコーンの仕込みも行っている。

バーバラはうすで働き始めたきっかけは、子どもの死だった。河合さんはショックでうつ状態になり、家に引きこもってしまう。

「見かねた夫が、『近くにパン屋さんがあるから、働きに出たら』と勧めてくれて。私にとっては大きなチャレンジでしたが、生きる気力さえなくしていた状況から抜け出したい一心で、応募したんです」

働くことと、仕事仲間たちとの触れ合いが、河合さんの新たな生きる力になっていった。ところが4年前、河合さんが67歳のとき、乳がんが見つかり、全摘手術を受ける。

「入院中に、仕事をやめようかとも考えました。でもこのままやめたら、また私は家に引きこもってしまう。それに、いつまた体を壊したり車を運転できなくなったりして働けなくなるかわからない。だからこそ、いまできることを精一杯やって、自分の役割を全うしようと思ったんです」