妻の美子ちゃんと八方尾根で(2010年)写真提供:末井さん
編集者で作家、そしてサックスプレイヤー、複数の顔を持つ末井昭さんが、72歳の今、コロナ禍中で「死」について考える連載「100歳まで生きてどうするんですか?」。母、義母、父の死にざまを追った「母親は30歳、父親は71歳でろくでもない死に方をした」が話題になりました。第7回は、末井さんのがん闘病、そして、会社員の節目・定年退職についてです。

第6回●「東大中退のパチプロ・田山幸憲の死。過酷な舌がん闘病の果てに」

ガン治療で切った大腸の写真を…

前回、パチプロの田山幸憲さんがガンになったことを書きましたが、ぼくも58歳の時に大腸ガンになりました。幸い早期だったので、抗ガン剤治療をすることもなく、大腸を13センチ切っただけで治りました。

切っただけでと言っても、13センチってかなりの大きさです。手術の後、ぼくはベッドに運ばれましたが、妻の美子ちゃんは、医師から切り取った13センチの大腸を見せてもらったようで、それをデジカメで撮っていました。その写真を見て思ったのは、ガンの大きさから比べてかなり大きな範囲を切るんだなということと、モツ焼きに見えるということでした。

閲覧注意! 妻が撮った大腸の写真

美子ちゃんは、その大腸の写真を使って年賀状を作りました。その年賀状には、次のような挨拶文を入れていました。

「あけましておめでとうございます。

ピンセットの左側赤いイボっぽいものが悪性新生物—ガンだそうです。去年の秋に、夫のスエイの大腸から切り取られました。ガンは小さかったのでスエイはすっかり元気になりました。我家にもついにガンが到来しました。皆様どうか御自愛下さい。皆様にとって良い年でありますように」