「舞台では暗い印象をいい意味で裏切り、運命に翻弄されつつも人間らしく生きる、エネルギッシュな青年・ゴヤをお見せしたいと考えています」

激動の時代を生き抜いた人

僕はスペインという国がものすごく好きで、もう何年も前からフラメンコを習ったり、サッカーのスペインリーグに熱狂したりしています。最大の魅力は、州ごとに大きく異なる個性。スペインリーグを観ていると、各州のプライドのぶつかり合いから生まれる凄みと、生々しい戦い方に圧倒されます。

名物のパエリアにしても、魚介がメインの州もあれば野菜がメインの州もあるなどバラエティに富んでいる。同じ国なのに、まったく違う情緒を味わえるところが好きなのです。

そして僕は今回、スペインを代表する天才画家、フランシスコ・デ・ゴヤを主人公にしたミュージカル『ゴヤ−GOYA−』に出演させていただくことになりました。宮廷画家を目指して田舎町からマドリードへ出てきたゴヤは、人生の半ばで聴力を失いながらも、フランス革命、スペイン独立戦争といった激動の時代を生き抜いた人。若い頃から出世欲が強く、相当な野心家だったと言われています。

《黒い絵》シリーズとして知られる「我が子を食らうサトゥルヌス」など、彼には暗黒のイメージのある方もいるかと思います。しかし舞台では暗い印象をいい意味で裏切り、運命に翻弄されつつも人間らしく生きる、エネルギッシュな青年・ゴヤをお見せしたいと考えています。

劇中には、フラメンコの要素も取り入れる予定です。他の舞踏に比べ、喜びや怒りといった感情が表現と直結しているのがフラメンコという踊り。スペイン人が聞いたら、「えっ、ゴヤがフラメンコを踊るの⁉」とびっくりすると思いますが(笑)、そこは純粋に踊り手として、芝居の延長線上で彼の感情を体現できたらと思っています。