「僕らはエンターテインメントを通して、観た方に『楽しかった。明日も頑張ろう!』と元気になっていただきたい」

つらいことがあっても舞台を観て前向きに

コロナ下の緊張は今も続いています。昨年の外出自粛期間中は、大好きなお芝居、歌、踊りといったエンターテインメントがすべて止まってしまったことを、とても残念に思っていました。

もちろん大変なのはエンターテインメント業界だけではありません。家の近所にある行きつけの飲食店などが閉店してしまうのは、本当に悲しい。なかでも、長年地元の人に愛されてきたお店の看板が外されるのを目にすると、胸が痛みます。

また、気軽に人と会えないことも大変つらいものです。今回コロナ禍を経験して、生きていくうえで他者とのコミュニケーションが不可欠なのだと、あらためて気づきました。自粛期間中は、気が滅入り、普段は好きでしている料理もする気になれない時もありました。そんな時は気のおけない友達と電話で話すことで、気持ちを浮上させたものです。やっぱり人との絆以上に大切なものはないですね。

僕らはエンターテインメントを通して、観た方に「楽しかった。明日も頑張ろう!」と元気になっていただきたい。僕自身も先日、日生劇場で鹿賀丈史さんが出演されたミュージカル『生きる』(市村正親さんとのWキャスト)を観て、久しぶりにスカッとした気分を味わいました。つらいことがあっても、舞台を観て明るく前向きな気持ちになれることがある。それを実感して嬉しくなりました。

ゴヤが生きた暗黒の時代はコロナ禍の今と重なる部分があると思いますし、耳が聞こえないせいで行動が制限されるつらさは、自身の経験から共感できます。そんな過酷な日々を、もがき苦しみながらも強く生き抜いたゴヤを、大事に、丁寧に、そして大胆に、現代風のアプローチで皆さんにお届けしたい。

会場となる日生劇場は、20代で初めて主演として立たせていただいた場所。この思い出深い劇場で、舞台を観てくださった方に生きる楽しさを感じていただけるよう全力で頑張ります。