イラスト:越智あやこ
最近、ウエストがきつくなってきた。健康診断の結果も気になる。でも口の中に幸せを運んでくれる食べ物の誘惑には、どうしても勝てないのです──(「読者体験手記」より)

炭水化物のオンパレード

夫の末期がん宣告……私の40代はそんな暗い幕開けだった。身内には「がんになったのはお前のせいだ」と罵られた。そのうえ、小学生だった娘はいじめに遭い、大学生の息子は恋人を妊娠させて学生結婚。この10年間、積もり積もったストレスは食欲へと変換され、気がつけば20キロも増えてしまった。

体を少しひねるだけで、わき腹の肉が絞ったぞうきんのように重なる。ベッドに横たわっても息苦しくて休めない。更年期障害のせいだと言い聞かせていたが、いよいよ身の危険を感じた。夫は今も生きているが、このままでは私が先に逝きかねない。そこでダイエットを決意した。

考えてみれば、悪の根源は「炭水化物」だ。白米やそうめん、蕎麦。特にパスタが大好物で、フライパンを握っているときが至福の時間だった。

どうやって痩せよう。まずは、「腹持ちのいいものは何か」を考える。するとたまたま通りかかった店で、だし油に漬け込まれた「産地直送」のタコを見かけた。東京者はこの響きに弱いのだ。そのうえタコは消化が悪く、腹持ちが抜群。「これだよ、これ!」。

ごはんはナシで、おなかが減ったらタコを食べる。そんな食生活が5日続いた。栄養バランスなんて頭にない。荒療治でもおかまいなし。とっととなんとかしないと、死ぬかもしれないのだから。