氷室冴子作品のヒロインたちに励まされ

実は、私が「作家になりたい」と思ったのも、いじめられた経験があったからでした。

そもそも、本を読むようになったのは母の影響です。母は宮尾登美子さんや林真理子さんの小説が大好きで、いつも真剣なまなざしで読んでいました。小学校3年生の頃、「小説って、そんなに面白いの?」って聞いたんです。そうしたら、「これなら、あなたでも読めるから」と、母が渡してくれたのが氷室冴子さんの『クララ白書』。あまりにも面白く、そこから氷室さんの小説に夢中になりました。当時は、氷室さんの『なんて素敵にジャパネスク』が刊行されていた時期だったので、新刊が出る度に、母と奪い合って読んでいたくらいです。

その氷室さんの小説が、いじめにあっていたときも私を救ってくれたのです。氷室さんの作品に出てくる女の子はみんな芯が強い。自分の足でちゃんと立ち、自分の力でトラブルに立ち向かう。そんなヒロインの姿に励まされ、私も頑張ろうって思えたんですね。

どんなにつらくても、氷室さんの本を読むことで学校にも行けたし、「いじめから脱するには、自分が変わらなきゃダメなんだ」と思い、前向きに自分を変えていけたのです。氷室さんの本に心底救われたので、「将来は作家になって氷室さんに会い、《あなたのおかげで作家になれました》って絶対に言おう」と決めていました。